昭和世代の映画雑学

『CGのなかった時代』名だたる監督の作品を面白く観る

過去に公開された名作・傑作では、DVDなどでよく観ると面白い発見がありますね。
この時代に「こんな車、走ってたぁ?」とか、サングラスなど反射するものに「カメラが写ってる!」、群衆シーンなどにスタッフが写っているということも、あるのではないだろうか。

また、映像やシーン前後の設定や状況に「コレ、ちょっと違うんじゃない!?」など、発見したことはありませんか?
こうした「ミスショット」は、ネットや特集した雑誌の記事でよく目にしますね。これらのミスショットと言われる「迷場面」を基に、少し視点を変えて観ると、もっと面白く観ることができ作品にも一層、愛着が湧いてくるよ。

 

何故、名作でも
ミステイクが多いのか?

現在は家庭で視聴できるDVDやブルーレイ、動画配信が普及しているけど、
1980年代以前の作品は映像を停止したり、繰り返して観たりする「視聴の方法」がなかったことがあげられます。

当時の製作者も多少の映像ミスには寛大だったし、気が付いてもCGというものがない時代なので、あるものを消したり修正したりできませんね。
観客も映画に集中して気付かなかった人も多かったようです。

溶けないジェラート!?

「ローマの休日」1953年製作 ★オードリー・ヘプバーンの名を世界にとどろかせた。

説明不要の名作中の名作です。オードリー・ヘプバーン演じるアン王女と民間人である新聞記者を演じるグレコリーペックのロマンチック・ラブストーリーです。この真逆の境遇にある二人の人物設定は、後の映画やテレビドラマの数々に用いられていますね。

これは結構、有名な「迷シーン」なのでご存知の人も多いかと思います^^

晴れ渡った空のローマ・スペイン広場の石段で、アン王女がジェラートを食べているシーンは普段、公務に追われたり「王室の仕来たり」から解放され、自由を満喫できるとても印象的な場面です。

彼女の背後に大時計が写ります。「時計」は2時40分です。すぐに新聞記者(グレコリーペック)が偶然を装って現れますが、そのあとに時計の針は、カットによってワープします。一時間以上経っているのにジェラートは溶けていなかったり、数分も経たないうちに時計は4時55分になっていたり・・

これはご存知かもしれませんが、単純に考えると一辺に撮影されたシーンではないことが解ります。

必ずしも時間の経過通りの順に撮影(純撮り)しているわけではないということですね。もしかしたら、ワープした時間の間に王女が街でをジェラートを買っているシーンや、他のシーンを撮っているかもしれない。また、監督に「ダメ出し」されて何回も撮り直ししたかもしれませんね。

しかし、このような「迷シーン」があって気が付いても、この作品の面白さは決して損なわれない。というのも、たったワンシーンの時間だけが物語のキーワードになっているから・・

  • 実は序盤のシーンで、正確に時間を知らせる時計のアップがあります。
  • 新聞記者を演じるグレコリーペックが、王室で鎮静剤を飲まされて街のベンチで寝ていた王女を仕方なく、自分の部屋に泊めます。
  • 朝、窓から見える大時計の12時を知らせるチャイムで、新聞記者は慌てて目を覚まします。
  • 予定されていた王女の「記者会見」は、11時45分からです。もう、間に合いません。
  • 新聞記者はガックリします。ソファーで「スヤスヤ」と寝ている若い女性こそ王女なのですが、それをまだ知りません。
  • ここから、観ているほうは俄然、面白くなり出し「ワクワク」した気持ちになる。

王女はヘアースタイルも変えて、これからも一生味わうことが出来ない夢のような一日の始まりだよね。

希代のヒットメーカーである
2人の監督の代表作にも
ミスショットが・・!?

・スティーブン・スピルバーグ監督

3度のアカデミー監督賞を受賞するだけでなく、人気ヒット作「メン・イン・ブラックシリーズ」やジュラシックパークなど数々の製作総指揮もこなしていますが、「ジョーズ」をはじめ、「レイダース 失われたアーク」、「E.T.」「ジュラシック・パーク」など発表する作品が次々と記録破りの大ヒットとなり、誰もが認めるハリウッド随一のヒットメーカーですね。

スピルバーグの出世作「激突!」では巨大タンクローリーが突っ込む電話ボックスのガラス戸に、演出中の若きスピルバーグの姿が写っている。

ジョージ・ルーカス監督

今や実業家というほうが相応しいですが、『スター・ウォーズ』が公開されて20世紀FOXが監督料の上乗せをしようとしたが、ルーカスはこれを受け取らない代わりにキヤラクター使用などのマーチャンダイジングの権利を取得してその結果、莫大な収入を得たのは有名な話です。

その記念すべき1作目でルークたちがデス・スターに進入するとき、ストーム・トゥルーバーの一団の1人がシャッターに頭をぶつけ、フラフラになっている「お茶目なシーン」がある。

スピルバーグとルーカス、これだけの地位を築いている存在ともなると「観ている人を楽しまそう」「面白くしよう」という遊び心で確信犯的に狙ったギャグだと思えてくるから不思議だよね。
『激突』は無名時代に監督し、その出来映えの見事さで一躍有名になったが、ガラスに映った若き日の姿は名刺代わりの「俺がスピルバークだよ!」なんてね。

巨匠と言われる監督にもミスが・・!?

アルフレッド・ヒッチコック監督

次は、サスペンスの神様と言われるアルフレッド・ヒッチコック映画の金字塔「サイコ」のミス?を紹介します。

4万ドルを横領した女性が警官の職務質問を受ける場面。左手で免許証を受けl取って、次のカットが変わるやいなや、右手で受け取っている。

私は、「ミス」ではなくヒッチコックの「マジック」だと勝手に思っています。というのも、この後に映画史に残る伝説のシャワーシーン(52カット)があります。つまり、これから起こるシーンに備えて心理的に不穏な状態にして「サスペンス」を盛り上げるとか、ヒッチコックお得意の緊迫したシーンに挿入するユーモアで一息いれるのかも。

ヒッチコックは他の作品でも「映像マジック」を駆使します。例えば「北北西に進路を取れ」では、ピストルの銃声が鳴る前に、離れていた所に座っていた少年が耳を抑えるシーンがある。

ヒッチコック映画は、実際は物理的に違うんじゃないの?というシーンでも恐怖感など、心理的な面をオーバーラップして映像に活かしている作品が多くあるので、そうした視点で観ると面白い。
こうなると、ミスショットではなく確信的ショットになるけどね。

黒澤明監督

あの完全主義の黒澤明監督にも、ミスがある!?身代金誘惑事件を題材にした「天国と地獄」の1シーンです!この映画の季節の補足をすると、ラストシーン以外は全編「真夏の設定」です。

炎天下の中、刑事たちが江ノ島の小高い丘の上にある住宅街で共犯者のアジトを探すシーンで遠方に「すっぽり、雪を被った富士山」が2ショット、写っています。

しかし、映画関係者によると、この間違えを指摘した人はひとりもいなかったそうです。というのも、非常にサスペンスのあるシーンで「2台の車が互いに反対方向から静かに丘の上を登ってくる、空間的にヒリヒリするようなサスペンスの盛り上げ方や、同行した運転手の子供が突然いなくなる」など緊迫感が頂点に達して、ついつい没入してしまいます。

私が黒澤明作品を名画座で初めて観たのは、この作品です。「7人の侍」を観るまえでしたが、コレ一発で「黒澤フリーク」になりました^^そのストーリー展開の面白さや、日本人らしからぬダイナミックな映像美に酔ってしまい上映時間の2時間23分は「アッと言う間ッ!」だったのをよく覚えています。

この作品は、ミスショットと言われるシーンで「気が付いた人、気が付かなかった人」も、さして問題にしない黒澤監督による圧倒的な映像の力があったのではないだろうか。

まとめ

現代は生成AIやCGやVFXの映像技術が当たり前になっています。撮影時にもともとなかったものが、後から加えられたり、写っていたものを消したりすることはいとも簡単に出来る。

過去に公開された名作でも、「余計なもの」などがCGによって修正されたDVDが発売されていますが、少し「もったいない」ような気がするね。

むしろ、手作り感や製作した時代や撮影現場の空気感まで伝わって、その映画の親しみもグンと増してきます。間違いを見つけたり、どういう理由で生まれたのかと、推測するのも面白いだけど監督の意図でそうしたのではないか?と思い巡らせるのも、映画の楽しみ方のひとつではないかと。


★ウィリアム・ワイラー監督作品1952年

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アルフレッド・ヒッチコック監督作品1960年
★スティーブン・スピルバーグ監督作品1971年

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