『伏線回収』という用語もすっかり定着したけど、ドラマを作る(脚本を書く)視点で考える場合、
【伏線】とは..あとで起きる事件や展開を面白く不自然でなく描くために、前もって何かをさりげなく示しておくこと。唐突に誰かが病気で死んでしまうみたいなシーンだと観客は都合がよすぎるとなる。
その人物の体調が悪いといった描写を伏線として入れる場合、あまりミエミエにしちゃうと観客も以後の展開を察してシラケてしまう。さりげなくというのがミソでドラマを展開しながらバレないように入れるのがコツ。
自然な流れで
感情移入をしてしまう伏線
伏線は「スリラー映画」「犯罪映画」だけではなく、「家族ドラマ」「恋愛ドラマ」「人情喜劇ドラマ」など、あらゆるジャンルの物語に必要不可欠。
例えば倉本聰脚本の名作、連続テレビドラマ「北の国から」が放映されていたよね。
妻の令子(いしだあゆみ)が家を出て半年。東京が嫌になった五郎(田中邦衛)は、幼い純と螢を連れ、故郷の北海道富良野で暮らし始める。母への思慕が募るふたりは五郎に内緒で令子に電話をする。二人の声を聞いた礼子は居ても立っても居られなくなり、富良野へやって来る。子供たちに会わせてほしいと五郎に頼むが断られる・・
二人が留守中に五郎は純と蛍の寝床がある2階に礼子を通す
母親が子供のパジャマを見つけそっと鼻にあて号泣する
母親はもう会えないかもしれない子供達がここで暮らしていると実感するいいシーンだったよねえ
その夜、礼子が帰ってパジャマに袖を通した蛍は・・
「母さんのにおいがしている」と礼子が来たことを確信する。
礼子が富良野に来る前、純と蛍がパジャマを着てはしゃいでるシーンがあった。
これが伏線なんだよねえ
子供達が布団の上で寝る前に「はしゃぐ」のは、日常でよく見られる光景で自然でさりげない描写。
子供の着ていた「残り香がある」パジャマという小道具を使い感情移入できる「伏線」が効いている。
限定した空間には至るところに
伏線がある
日系企業のハイテクビルが13名の武装集団に占拠され、別居中の妻に会うためにロサンゼルスからやってきたニューヨーク市警の刑事ジョン・マクレーンが巻き込まれる密室アクションの傑作。
ブルース・ウィルス演じるニューヨーク市警察刑事のジョン・マクレーンは、妻が働く『ナカトミ商事』の社長からクリスマスパーティーに招かれロサンゼルスにやって来る。ナカトミビルのエントランスに入ると、タッチパネルでエレベータの位置やビルの構造をさりげなくしめしているシーンがある。
銃撃戦の途中、屋上への通路で壁に貼ってある『グラビアヌード写真』のポスターにタッチしてナカトミビル内の位置関係を確認する場面などがある。つまりドラマやアクションが進行しながら、巧みに伏線をはっている。
そして、ジョン・マクレーンの妻が働くデスクの上に置いてある家族の写真がこの映画の最大の伏線となっている
というのも、人質の中に別姓のジョンの妻がいるというのがポイントなんだよね。
「この写真、何かあるな」と思わせてしまう見せ方なんだけど、テロ集団のリーダーのハンス(アラン・リックマン)がいつ気が付くのか?伏線となるシーンの積み重ねでサスペンスを盛り上げている。
そのひとつがナカトミ商事の社員と偽ったハンスとジョンが対峙するシーン。ジョンは「ニューヨーク市警の刑事ジョン・マクレーン」とハンスに名乗る。通常の刑事の職務として犯罪に対処しなくてはいけないが、これだけでは主人公を必死にさせる動機としては弱い。しかし妻を救わなくてはならないとなると話は別。
妻の存在がいつどのようにしてテロリスト側に知られるか、、というのがサスペンスを高める効果となっている。
小道具を使った
伏線と言えばヒッチコック作品
『裏窓』
この映画の観客が主人公の部屋にいるような視線で始まるオープニングのこのタイトルバックが印象的だよね。
ヒッチコックの映画には小道具を使った作品が多い。この作品はやはりカメラということになる。というのも、冒頭の長回しのカットで主人公がプロの報道カメラマンだとわかる。おまけに過激な現場の撮影で片足を骨折をしてしまい、中庭をはさんだ向かい側のアパートの裏窓から部屋の中の住民の暮らしがわかる絶好のロケーション!つまり「のぞき」じゃないか(笑)
主人公(ジェームス・チュアート)は足を骨折して動けない。だから終日、窓のそばに座り込む。窓の外には様々な見世物があって彼を飽きさせない。
若いダンサーが下着姿でダンスの練習をしている。売れない作曲家、一人暮らしのオールドミス、喧嘩が絶えない中年夫婦、など観ている我々もシーンを重ねられるうちにくぎ付けになる。そしてシーンとシーンの間に巧妙に貼られた伏線がラストに繋がっていく。
あるとき、主人公が奇妙な女の叫び声を耳にする。このときは、さほど気にしていなかったが夜中に雨の降る音で目をさます。正面の部屋のセールスマンが大きなスーツケースをかかえて外出する。そして一時間ほど経ってセールスマンが帰ってくる。しかしすぐまた同じようにスーツケースをかかえて外出をする。こんな夜中にどこへ・・もちろん伏線はすでに張られている。彼には病床の妻がいて二人は喧嘩が絶えないという伏線。
ついに妻を殺害したサラリーマンに見破られる。
主人公が住んでいるアパートの部屋にコツコツと足音がゆっくりと忍び寄る。さらにサラリーマンが部屋に入り、カメラを駆使したクライマックスシーンのサスペンスの盛り上げ方、そしてマニアックな描写は如何にもヒッチコックらしい。
友人の刑事が助けに来たと同時に窓から落とされ骨折し、ラストシーンは両足ともギブスをするオチがいかにもヒッチコックらしいユーモアで終わる。
まとめ
シナリオは作品の設計図とも言えるが、映画・ドラマにおいてシーンは必ずつながっていて、前のシーンは後のシーンのために組まれている。つまり伏線は、あらゆるシーンになくてはならない要素ということもいえる。特に小道具を駆使する手法は、伏線としての役割を多く担っている場合が多いよね。巧妙に張られた伏線の意図や思惑が深く分ってくると、映画やドラマ・伏線回収も一段と面白味が湧いてくるのではないかと。
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