寅さん!

寅さんが自分から身を引いた恋とは・・

『縁側の別れ』にすべてが集約される..叶わぬ夢・・

これまでは一方的な恋心を派手に打ち砕かれる失恋がほとんどだったが、本作の寅さんは己の分をわきまえて自ら身を引いていく。

お互いに憧れはするものの相容れない「放浪と定住」という明確なテーマとして綴られ、寅は柴又で喫茶店を営む未亡人の貴子に恋し、親子3人で暮らす夢を抱きながらも貴子への愛が実感できた瞬間、本質的に違った世界の人間だと悟ってしまう。

名優・志村喬による「りんどうの花」、旅芸人一座と寅さんのラストシーンなど、シリーズ屈指の名場面が満載。もはやただの喜劇作品とはいえない、重厚さすら感じさせる作品。本作ではフラれる前に自ら身を引き旅に出る”フラれない寅さん”も誕生する。

森川おいちゃん最後の作品だった・・

今回のマドンナは六波羅貴子/池内淳子 当時38歳


重ねた苦労が外面ににじみ出る女主人役を池内淳子が好演。今回の寅さんは、”薄幸な女性に尽くす”という古いヤクザ映画のパロディともいえる奮闘を見せており、その中心を担うマドンナとしてはぴったりのキャスティング。

秋の訪れを感じる/りんどうの花が効果的に登場。

博の父親が寅さんに地道な生活を説く庭一杯のりんどう。

秋の美しい月夜に貴子へ贈る/あなたの悲しみに寄り添う花・・

旅芸人・坂東鶴八郎一座とのふれあい

同じ旅人同士の悲哀がラストの伏線となる

 

『寅さんの心に響く言葉』。〇

今夜中にこの雨も からっと上がって、

明日はきっと 気持ちのいい日本晴れだ。

お互えにくよくよしねえで 頑張りましょう。

劇場が揺れた!「笑ってえ~、泣いてえ~、コール」🤣

松竹直営の映画館で『初期の男はつらいよシリーズ特集』のこの場面を観た時、観客の笑い声が鳴り止まず次の台詞がしばらく聞こえなかったという稀有な映画体験をした。

「人間の本当の暮らし」について説く夜・・

本作品はテーマ性が強いことも特徴で、そのテーマは「放浪の悲哀と、定住への憧れ」といえる。この主題を軸としながら、それぞれの登場人物がおりなす印象的な名シーンが豊富にあり、話の筋よりもそれぞれの名場面で本作を記憶しているファンも多いのではないか。

名優・志村喬による語り「りんどうの花」は物語展開上のキーポイントでもあり、作品に重厚なトーンを与えている。セリフ自体なんてことないのだが、志村喬の存在自体の重みにより、寅さんの生き方をコロリとかえてしまうほど感銘深い。

もし、寅さんが貴子と結婚して喫茶店のマスターになったらと勝手に想像する..ちょっと凛々しい渥美さんの表情だけど・・


 


 

お互いに憧れはするものの..【叙情的な縁側の別れ】

 

 

縁側の別れ / 秋...虫の音・・

いい月夜でございますねぇ

私も旅がしたいわ・・
こんなお店も何もかも、みんな捨てちゃって

寅さんは、またいつか旅に行くの、

いつでしょうか、風に誘われるとでも申しましょうか

羨ましいわ、私も一緒について行きたいなあ

そうですかねえ、手前が好きで飛び込んだ稼業だから、
今さらグチも言えませんが、
はた目で見るほど、楽なもんじゃないですよ

あたし、2階のシーンって..結構好きでしたね。~倍賞千恵子~

旅に出るお兄ちゃんとふたりっきりになるシーン。『いつも切な~い!!』っていう思いをしましたね。

お兄ちゃんの素を見るシーンでもあったし。あのトランクに、少ない荷物を一生懸命こう、詰めるっていうね。一番最後の作品『紅の花~1995年、第48作』のときは、それが最後の作品になって。ずーとスタジオを見渡していたのを憶えてますけど。で、「おっ、お疲れ様」って降りていったんですよね。

 

粋な小道具の演出・・

ちょうど、この年に『帰って来たウルトラマン』のテレビ番組が開始された・・

【放浪と定住の基本テーマ】国民的シリーズの引き金となった作品

この作品は東京丸の内ピカデリー劇場ほか、松竹系の洋画ロードショー四劇場で公開された
それまでサンダルや雪駄で観に来てた人もさすがに靴を履いて映画館に行ったんだろうか(笑)

シリーズ屈指の晴れ晴れしいラストシーン

八ヶ岳の見える田舎道・・
寅さんとお地蔵さんが良く似合う..

まさに旅先での家族・・

冒頭とラストに登場する、寅さんと旅芸人・坂東鶴八郎一座とのふれあいも印象深い。放浪生活の悲しみに負けず、肩を寄せ合いながら旅をつづけるラストシーンはシリーズベストのヌケの良さであり、もはやただの喜劇作品とは言えない重厚な演出が続く本作に鮮やかな幕引きをもたらしている。

ロードショー劇場のワイドスクリーンいっぱいに広がる美しい映像が新たな感動を生んで、
これまでこのシリーズを観たことのない人もこの日本映画の新たなファンになったことでしょう


 

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