寅さん!

寅さんと過ごした人生最後の幸せなひととき・・

マドンナが死んでしまう!

第18作 『寅次郎純情詩集』

数々の名作に出演、日本映画を代表する名女優・京マチ子が、薄幸のマドンナ綾を好演❣

この作品、笑いと悲しさのバランスが絶妙なんですね。🤣😭

山田洋次監督の演出が冴え随所にそれが見られる🎬

柴又駅の別れの名場面は数多くありますが、

さくらと寅さんの会話が深い印象を残す。

シリーズで初めての衝撃的なストーリーなのに...爽やかな感動があるのは何故なのか・・

シリーズ中...唯一の年上のマドンナ

溝口健二『雨月物語』(1953年)、黒澤明監督作品『羅生門』(1950年)、衣笠貞之助監督作品『地獄門』(1953年)など、海外の映画祭で主演作が次々と受賞し「グランプリ女優」と呼ばれる。

このとき・・
京マチ子 52歳
渥美清  48歳


今回はダブルマドンナ・・!?

父親は「火宅の人」でお馴染みの作家の檀一雄氏。
NHK総合テレビのクイズ番組『連想ゲーム』で紅組レギュラー解答者に抜擢されると、カンの良さと飾り気のないお色気で茶の間の人気をさらい、清純派女優としてテレビや映画に引っ張りだこになった。

満男の産休教員として
出演したのは「現役の慶大生」のとき・・

13年後には、しっとりした和服が似合う泉の叔母を演じる。

 

あらすじ

満男の担任教師・雅子が家庭訪問で「とらや」にやって来たところに、ブラリと帰って来た寅。あきれる皆をよそに、持ち前の喋りで雅子先生の相手をし、家庭訪問をめちゃくちゃにしてしまった。さくら夫婦も激怒。バツの悪い寅は再び旅に出てしまう。数日後、信濃路を旅する寅は、昔世話した旅役者一座と偶然再会。その夜、ドンチャン騒ぎを繰り広げるも、翌朝になって無銭飲食が判明し、警察のやっかいになってしまった。そして寅は、知らせを受けてやって来たさくらに引きとられて柴又へ。そんな折、雅子が母・綾をを連れて「とらや」にやって来た。綾は由緒ある家柄の未亡人だが、昔から病気がちで家にとじこもっていた。綾と昔から顔なじみだった寅は、高嶺の花と知りながらも彼女に恋心を抱きはじめるが・・・

寅さんと鉄道

この作品では上田電鉄別所線の丸窓電車として親しまれたモハ5250が登場してますね^^

お馴染みの夢から覚めると..おや、この人は!?

『アラビアのトランス』の夢を見ていた寅さん。床屋の蒸しタオルのあまりの熱さに目が覚めると・・


眼鏡をかけた床屋の主人は..備後屋さんですよねえ。サプライズ出張出演 だあ~^^

【寅さん映画/裏のウラ】🎬

実はこの人、本業は装飾(小道具)の助手です。本名は露木幸次さん。出演者のタイトルバックでは、ノンクレジット。愛称は「つゆちゃん」。ロケ先では宴会部長を務める陽気な性格と勘のよさを買われ、佐山俊二さんが亡くなったあと2代目備後屋になった。

装飾の助手?どんな仕事かというと・・
例えば2日がかりの撮影で、どうしてもうまくやらなければならないのが前日の食卓(消えもの)の再現!
一日目の撮影が終わると同時に、テーブルの上に残っている料理を角度を変えて10枚ばかり写真に撮る。博のコップに残るビールの量。寅さんの皿のイモの転がり具合、刺身の色合い...それらの写真を参考に翌日、撮影開始までに新しい食べ物で前日の状態を復元する。あたりまえの撮影ではないがしろにされがちなところに大きな努力が払われている。

いつも、柴又で寅さんにいびられている備後屋さん、これは日頃のリベンジか・・😅

満男の家庭訪問は寅さんの独壇場と化す・・

お友達、多いほうですか?

ええ、友達多いねえ..

どんなお友達かしら..

伊賀のしんぺい、コイツはバクチ好き・・

小夏のジョージ、これ、おかま、夕方四時頃になると

『たわし』みたいな髭がざぁーと生えてくる・・

お兄ちゃんのことじゃないの!🤣

テキヤ仲間の通り名というのか、それを聞けばあいつ..とすぐ分る・・シリーズにはいろいろ出てきますね。

・シッピンの常(26作 寅次郎かもめ歌)・カラスの常(28作 寅次郎紙風船)・般若の政(39作 寅次郎物語)などなど...

ポンシュウは、あのポンシュウですね(笑)・・私の想像だが、この名前を付けた根拠は..おそらく本州をモジったのではないかと。
というのも九州というテキヤ仲間がいましたからね(第37作 幸福の青い鳥)

だけど、小夏のジョージは、一度みてみたかった~🤣

さくらや博は、この寅さんの振る舞いに激怒する。特に博は父親として馬鹿にされ放題・・

今夜は、絶対決着を付けてやる! いつも理論的で冷静な性格の博がブチ切れる・・

オールバックの髪型のせいもあるのか、なかなかの迫力!

寅さんと風景

いつも通り喧嘩をして旅に出た寅さんは・・・長野県上田市別府温泉で坂東鶴八郎一座に会う

 

「とざいとう~ざい~」

拍子木を打ってカンカンと高く澄んだ音が聞こえてくる・・

長野県上田市の別所温泉にある北向観音で今夜の芝居のビラを配っている旅芝居の一座・・
じっと見つめる寅さん・・

「先生!車先生・・」あの独特のイントネーションで呼び掛ける大空小百合、
第8作の寅次郎恋歌以来の再会をする。

坂東鶴八郎一座といえば、寅さんにとって『旅先の家族』と言える^^

今夜の芝居を観に行くと約束をする・・

{あああ、人間はなぜ死ぬのでしょう! 生きたいわ! 千年も万年も生きたいわ!}

小説『不如帰(ほととぎす)』のこの台詞を、後で柳生綾(京マチ子)に言わせることで、ああ..この劇中劇のことだなあと思い出させる親切がほどこされている。

同時に・・質問に答える寅次郎を通して悲劇を喜劇に転化させる山田監督の演出が光る。

 

「芝居の途中ではありますが、皆様にお知らせ致します。昔からわたしどものごひいきの、、ワザワザ東京から駆けつけてくださいました。車寅次郎先生です」

旦那気分で気持ちが天まで舞い上がった寅さん、このままでは終わるはずがない^^
その夜..見栄っ張りの寅さんは、坂東鶴八郎一座を宿に招いて大盤振る舞いをする。

 

寅さんシリーズの楽しみ方(1)

この旅館のシーンで女中を演じてるのは谷よしのさん。松竹最後の大部屋女優と言われ小津安二郎監督の「麦秋」にもチョイ役で出演している。僅かなシーン、僅かな台詞(ないときもある)でも強いインパクトを与える名脇役なんです。シリーズでも40の役柄で出演、面白いのがひとつの作品に違った役柄で出ていることもある。第26作「寅次郎かもめ歌」ではなんと3回も出ている。シリーズを通してこの人を見つけるのも一興かと思います。

 

カメラワークが印象的だった翌朝のシーン・・

部屋の外から、寅さんを呼ぶ声が聞こえる。

「先生、車先生・・」

小百合の手を差した先に向かって、カメラが左斜め上にパンすると・・・

坂東鶴八郎一座が立っている。

敢えて・・大空小百合を石段の下に立たせることによって芝居の終幕で見せる観客に感謝するカーテンコールのような粋なショットになっている🎬

しっかりやれよ!また、日本のどこかで会おうなあ・・

この後、無銭飲食で別所警察署に御用となるのだが・・・

 


さくらちゃん、大変だよ。寅ちゃんがね、

無銭飲食で捕まっちゃったんだよ!

 

もちろん、身元引受人は妹の諏訪さくら・・

兄の身を案じるさくらの心配をよそに・・

 

この「愚かなる兄」をもった..さくらに同情する・・・

しかし、こういう描写がアンチとなって..後半の兄妹の絆の深さが際立ってくる・・


雅子先生がやって来て、さくらの『ひと言』が

お兄ちゃんはそんなに若くないのよ、結婚してたらあのくらいの娘さんがいてもいいのよ

仮にあの先生に綺麗なお母さんがいたら、あたしたち文句はいわないわよ

お母さんだったらいいんだな、お母さん止まり。

 

母もいっしょなんですよ・・🤣

 

ぁ~🤣

寅さんにスイッチが入った!

その後は、柳生家に入りびたり・・


 

寅さんシリーズの楽しみ方(2)

この真実を曲げて伝えることはないでしょう』は、多分に渥美清さんのアドリブが含まれていると思う。というのもシリーズ中..随所にみられますが、例えば・・

イージーな考え方 ・皆様も先刻ご承知の通り、などなど・・およそ寅さんから発せられる言葉とは考えにくいかと..もともとの台本の台詞はあると思いますが渥美さんが微妙にアレンジしているようだと勝手に想像してしまいますね。その辺は山田監督も渥美さんに全面的に任せていて、二人の信頼関係が分かりますね。ちなみに、渥美さんは山田監督の台本に意見を言ったことは一切ないとか・・。

 

源ちゃん、婆や(浦辺 粂子)にも「ほんとに可愛い子だね」と言われてました^^


 

山田監督の演出・作劇術

不幸な半生を送って来た綾にとって、
このひとときは忘れられない思い出になる。

綾が余命僅かなのを知っているのは雅子とさくら、そして前のシーンを観ている我々だけ。

満男の教室で、雅子の告白シーンがさりげなく描かれていることで..我々は二人に感情移入できる。何も知らない寅、博、おいちゃん、おばちゃん達のはしゃぎようも悲しみを増幅させる。
「とらやでの、お店は何がいい」このお茶の間団欒シーンが綾の死後に心に沁みてくる..


人間は、なぜ死ぬんでしょうね・・

 

死期を悟ったマドンナの「人はなぜ死ぬの?」という根源的な問いかけには、全身全霊をかけた道化を演じ、綾に最後の安らぎと笑顔をもたらす。

シリーズでヒロインが死んでしまうという異色の作品・・

「この庭先でのシーンも..悲劇を喜劇に転化させる山田監督の巧みな映画技法。

渥美清さんのリズミカルな「天才的な話術」と「身振り手振り」の演技にも引き込まれる・・

〇 柳生家・庭

綾 「人間はなぜ死ぬのでしょうねえ」

寅、ドギマギして立ち上がり、苦しみまぎれに答える。

寅 「人間、うーん、そうねえ、まァ、なんて言うかな、まァ、結局あれじゃないですかね、まァ。こう人間が、いつまでも生きていると、あのー、こー、丘の上がね、人間ばっかりになっちゃう、で、うじゃうじゃ面積が決まってるいるから、で、みんなでもって、こうやって満員になって押しくらマンジュしているうちに、

ほら足の置く場所がなくなっちゃって、で、隅っこに居る奴がお前、どけよと言われて、ア、アーなんて海の中へ、パチャンと落っこてアップ、アップして『助けてくれ』なんてね、死んじゃうんです。結局、そういうことになってるんじゃないですか昔から・・・・あまり深く考えないほうがいいですよ」

綾「おかしいは。寅さんて」

安心したように笑う寅、木の葉がひとしきり舞い落ちる。

📖シナリオと映像の検証』より

実はこのシーンの台詞、東京大学の国語入試問題に出題されていたんですよね。寅さんの言動を通して東大が求める人物像について考察する主旨の問題だったとか・・


敢えて死の瞬間を見せず、残された者に焦点を

誰にも愛されたことがなかった生涯だったけど・・でも、最後に..たとえひと月でも寅さんという人が居てくれて..お母さんはどんなに幸せだったか・・・

 


柴又駅での寅さんとさくらのシーンは、
何故、味わい深いのか・・

この柴又駅のシーンで山田監督は映画技法のひとつである『対位法』を使ってます。

💡対位法とは~悲しい場面に明るい曲を流す事によって,逆に悲しさを強調するよ うな技法

 

年末の慌ただしい喧騒の中、遠くで流れている・・商店街のスピーカーからクリスマスソングが聞こえる。

対位法の曲や歌の音量は、大きな音量で聴いてくれが主張すると「あざとく」なる。

 


何気ない日常や年末の情景の描写も、残された二人の悲しみを浮かび上がらせる 

・結婚披露宴の帰りなのか女性たちの賑やかで華やかな・・笑い声・・

・赤ん坊をあやしているお母さん・・泣き声・・

 

なあ・・さくら、人の一生なんてはかないもんだな・・

俺、あの時からずっと考えてたんだ・・花屋よ、いいだろ!

仕込みだとか、配達だとか、めんどくさいことはいっさい俺がやるんだよ・・

あのお母さんは、花束をつくってただ渡してくれりゃいいんだよ・・

流行るぞ、この店!

そんときはよ・・

俺もプッツリ..渡世人稼業、やめてよ、とらやでゆっくり正月過ごすことが出来たんだよな・・

 

お兄ちゃん、そんなこと考えてたの、ちっとも知らなかった。

あのお母さんに)その話、聞かせてあげたかったわね・・

 

さくらの涙ぐむ表情と、冬の長い陽につつまれた青空が印象的なこのシーンは

息を呑むほどに美しい。

マドンナが死んでしまうという異色な作品で、寅さんの恋路は哀しみに満ちていますが、寅さんの献身的な行為を通して

『人を愛する心』が沁み込みます。

山田監督の演出力が見事な名篇です。

 


 

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